監督署の調査…と聞くと、「誰かが監督署に駆け込んだか??」と考える人は多いようです。
たしかに労働者からの通報による調査はありますが、実態としては通常の調査、つまり「定期監督」による調査が多いのではないでしょうか。
調査の種類としては、定期監督・申告監督・災害時監督・再監督の4つがあります。
それぞれの説明について、以下の表にまとめてみました。
定期監督 | 一般的な調査です。監督署が任意に会社を指定して調査に来ます。 |
申告監督 | 会社の従業員や退職者等からの申告(通報・タレこみ)を受けて行われる調査です。調査の内容は、申告内容に絞って行われることもあります。 誰が申告したか教えてくれることはありませんし、申告監督であることすら教えてくれない場合もあります。 |
災害時監督 | 労働災害が発生したことを受けて行われる調査です。 労災の原因を突き止め、再発防止の取り組みが必要になります。 |
再監督 | 過去の是正勧告の内容が適切に改善されているかについて、確認する調査となります。また、是正勧告に対して改善報告が提出されていない場合にも再監督があります。 再監督の結果、改善がされていなかった場合は、前回よりも重い勧告を受けるケースが多いようです。 |
また、会社に立ち入りで行われる調査と、監督署に呼び出されて行う調査があります。
監督署で行われる場合は、ほぼ定期調査の場合と考えてよいでしょう。
ちなみに、監督署の規模にもよりますが、監督署の中でいくつかの部署に分かれているケースがあります。
① 方面 :労働条件(労働時間・賃金等)の相談、就業規則や36協定の届出
② 安全衛生 :健康診断結果報告や産業医選任報告の届出、特定機械等の検査
③ 労災 :労働保険の加入・申告、労災関係各種請求の受付
上記の3部門が主な窓口となります。
企業における通常の人事処理の中で、毎年定期的に届出を行う36協定は方面へ、労働保険の年度更新は労災へ、とそれぞれ書類を持っていく窓口が異なっているかと思います。
これは、上記のように担当する部署が分かれていることが理由に挙げられます。
調査の種類が4つに分けられることをご説明しましたが、定期調査については具体的にチェックポイントをまとめておりますので、詳細はこちらでご確認ください。
それぞれについて、簡潔に事前の対策をご説明致します。
定期監督 | 主に労働時間管理、賃金支払い状況、安全衛生管理体制などについて、全般的に調査を受けます。 賃金計算等の実務を担当されている方を同席させる、もしくは、すぐに確認が取れる状態で調査に臨むことが多いことから、資料準備と日程調整が具体的な事前対応となります。 36協定等の労働時間管理が正しく行われているか、未払い賃金が無いかについては、出勤簿・賃金台帳により細かくチェックされることから、これらの内容を事前に確認しておきましょう。 |
申告監督 | 上記の定期監督調査の事項に加え、申告(通報・タレこみ)の内容の真偽を見極める為、個別具体的な資料確認がなされる場合があります。 会社側で申告内容が想定できる場合は、予想される関連書類を取り揃えて精査しておくことが必要です。 |
災害時監督 | 労災事案について、安全管理体制に不備が無かったかや教育体制は整っていたのか等について、発生の背後に潜む事項まで調査を受けます。 直近で発生した労災事故について、その事故内容・対象労働者の時間管理や安全衛生管理状況等に応じた資料の準備が必要になります。 |
再監督 | 過去の是正勧告事項について改善がなされているか、指導事項について法違反に繋がる可能性が払拭されているのか、資料を提示しつつ監督官の理解を得ることが必要になります。 万が一、前回の是正勧告事項についての対策がなされていないような場合については、監督署も強硬な対応(書類送検等)に及ぶ可能性があるため、慎重に対応すべきです。 |
どの調査の種類にも言えることですが、指摘を受ける可能性のある事項がどこであるのか、洗い出しを行う必要があります。
実態としてすべてが完璧に整えられている中小企業が稀なのでしょうから、不備全てに対して監督官から指導を申し渡されることは殆どないと思います。
ただし、労働者の健康にかかわる事項や賃金支払いに関する事項については、監督官もそれなりに強い姿勢で臨んできますので、このあたりの事前チェックは欠かせません。
調査までの監督官対応について
調査の目的を事前に特定できるケースとそうでないケースがありますが、最近の社内事情等をお伺いして予想を立てることは可能です。
また、どの調査においても定期監督で聞かれる事項については、一通りカバーしておく必要があります。
よって、賃金台帳・出勤簿などの管理書類を見せて頂きつつ、安全衛生体制に関する状況のヒアリングを行うことで、監督官が指摘するであろう事項の予測を立てることが可能です。
仮に賃金支払い状況に不備があった場合は、「最大のリスクは何か」「会社としてどこまでは許容できるのか」を事前に社内協議して頂くことをお勧めしております。
事前に落としどころを想定しておくことで、当日の対応方針が固められます。
これらに必要なお打合せへについても、同席させて頂きますので、お気軽にご相談ください。