ここでは、実話に基づき社労士とある会社の社長とのやりとりを、会話形式で紹介します。
年度末でドタバタしている中、成田労働基準監督書から封筒が届いていました。
怪訝な顔で封を開けると、「労働条件 自主点検表」というタイトルの文書が入っており、
記入の上3月10日までに返送せよとのこと。
やましい事はしていませんが、「監督署の調査は大変」を聞いたこともあるので、できれば
勘弁こうむりたいところです。さて、とうしたものか、高倉社労士に電話です。
田中社長
成田市で社員5名の会社を経営している。
年度末でかなり忙しくなってきており、最近暴飲暴食ぎみ。
今朝、自宅の椅子に座ったら椅子の足が折れてしまった。
家族には「経年劣化だ」と言い張っているが、
体重のせいであることは誰よりも自分が知っている。
高倉社労士
成田市で社会保険労務士をしている。
千葉県と成田市が大好き。
学生時代はサッカーのゴールキーパーをやっていた。
その時の名残りか、「会社を守れる社労士になる」が口ぐせ。
監督署から来た手紙を受け取った田中社長、こんな時は社労士に電話です。
社長:あっ高倉さん、田中です。ちょっと相談なんですけと、大丈夫ですか?
高倉:大丈夫ですよ。どうしかしました?
社長:いや、どうかしたって程ではないんだけど、監督署から手紙が届いてさぁ。
これって対応しなければならないのかな?
高倉:ちょっと内容を見てみたいので、PDFにしてメール添付で送ってもらえます?
確認でき次第、折り返しますよ。
社長:そう、助かります。では、メールを送りますね。
事業主宛の提出依頼文書
自主点検の趣旨が書かれている
点検結果を入力する用紙
提出するのはこの表のみ
点検をするための用紙
こちらは提出不要
高倉:田中社長、見ましたよ。
時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を提出したって言っていましたよね。
その際に記入した残業時間数の上限が多かったのが原因のようですね。
上限時間は何時間で提出したのですか?
社長:知り合いから多めの時間数を書いておけば大丈夫って聞いたから、80時間って書いて
しまったけど、まずかったかな?
高倉:でも、社長のところってそんなに残業させてないですよね?確か毎月40時間以内で、
一番多い月でも60時間に収まっていたと思いますけど。
社長:実際はそんなところだろうね。やっぱり実態どおり60時間にしておくべきだったかな。
高倉:労使協定は会社と従業員代表との合意なので、限度時間に制限は無いのですが、
時間数が多ければ監督署としては、過重労働になっていないかや健康確保の措置を
やっているか、チェックが必要になるということですね。
社長:そうだったんだ。失敗だったな。でも、この手紙どうすれば良いかな?
高倉:そうですね。提出しないと監督署から怪しまれますし、出しましょうよ。
社長のところは大きな問題なさそうですし、出さないリスクの方が大きいと思います。
社長:じゃあ、提出しない方が立ち入り調査につながる可能性があるってことなの?
高倉:必ずしも調査が入るとは言えませんが、監督署も「何か隠している」と思われても仕方
ないのでしょうね。
社長:そうか、じゃあ出すことにするよ。
記入の仕方は見ればわかりそうだけど、注意することはあるかな?
高倉:「正直に書く」ということでしょうか。
自主点検を行った結果、不備があった事項を今後正していけば済む話だと思います。
虚偽の記載をした場合、立ち入り調査により嘘が判明したとなると、監督署としては
悪質と捉えられるリスクがあります。
社長:正直に書くね。そうするよ。でも、監督署の調査って、そんなに大変なのかな?
取引先の社長なんかの話だと、えらい目にあったとか聞いたな。
来月来てもらった時に、その監督署の調査についても少し教えてくださいよ。
高倉:いいですよ。
調査表も監督署に提出する前に、チェックしますよ。メールで送っておいてください。
社長:いつもすまないねぇ。また、よろしく!
今回のケースは、監督署から送られてきた手紙にも書いてあるとおり、36協定の上限時間数によるものでした。よって結果としては、調査表に実態を記載して提出でおしまいでした。
この調査表により、監督官は何を見ようとしているのでしょうか?
今回の書類を詳しく見ていくと以下の質問項目があります。
以上は、長時間労働に関する事項と過重労働による健康障害防止について、ある程度目的を絞った質問であると思われます。
また、別の書式の点検表では、もっと質問項目が多く、以下のような内容でした。
これらの項目は、監督署の定期調査が行われる際の調査項目と、おおよそ一致しています。
(当然、これ以外の調査項目について、調査が行われる場合もあります)
このようなことがあった場合には、お気軽に社会保険労務士にご相談ください。