ここでは、実話に基づき社労士とある会社の社長とのやりとりを、会話形式で紹介します。
成田労働基準監督書から届いた「労働条件 自主点検表」を無事に提出した田中社長。
取引先社長から労働基準監督署の調査で「えらい目にあった」と聞いていたこともあり、
監督署の調査とはどのようなものなのか、高倉社労士に聞いてみることにしました。
田中社長
成田市で社員5名の会社を経営している。
今年度の予算は達成した為、来期の増員を検討中。
春から娘が高校入学。
もっと家族もかまってあげたいが、仕事に振り回される毎日。
高倉社労士
成田市で社会保険労務士をしている。
千葉県と成田市が大好き。
学生時代はサッカーのゴールキーパーをやっていた。
その時の名残りか、「会社を守れる社労士になる」が口ぐせ。
社長:こんにちは、先日は自主点検表でお世話になりました。
高倉:いえいえ、あの内容であれば、特に心配はないと思います。
その時のお話で、監督署の調査について話を聞きたいっておっしゃっていましたよね?
今日はいくつか事例を持ってきました。もちろん社名とか企業情報は秘密ですけどね。
社長:できれば、ナマの情報を聞きたかったんだ。聞かせてよ。
高倉:まず、社長の会社は成田市なので、管轄は成田労働基準監督署になりますよね。
先日の調査表も成田監督署からのものでしたし。
この監督署の親玉は労働局といって、千葉県だと千葉労働局になりますね。
更にその上には、厚生労働省がいます。
社長:成田の監督署は、51号線の成田山新勝寺の反対側だったよね。
高倉:そうですね。
ところで社長、監督署の「しょ」って文字ですけど、警察署と同じ「署」ですよね。
社長:おっそうだね。場所の所ではないんだね。
高倉:監督署にいる監督官は、特別司法警察署員として権限を持っている国家公務員です。
「立ち入り」「資料提出」「尋問」「強制捜査・証拠押収」の権限も持っています。
脅かすわけではありませんが、しっかりとした対応は必要でしょうね。
社長:いやぁ、別に変なことをしているつもりは無いけど、できれば関わりたくないねぇ。
高倉:みなさんもそうおっしゃるので、そう考えるのは社長だけじゃないので、大丈夫です。
その監督官が、企業に対して立ち入り調査を行うことを、臨検調査といいます。
また時折ですが、監督署まで資料を持参しておこなわれる調査もあります。
社長:できれば、こちらから持っていくほうが気が楽だね。
高倉:調査の目的は、労働基準法等の法令違反の有無を確認することです。
万が一、違反などが見つかった場合は、是正勧告書や指導票といった文書が交付され、
その内容に従って企業は改善対応を行うことになります。
社長:そうそれ、その是正勧告書ってやつで、取引先は散々な目にあったと言っていたよ。
どんな文書なのかな?
高倉:こんな感じですかね。読んでもらったほうがイメージつかめると思います。
社長:へぇ、こんなことまで言ってくるんだ。よくここまで見つけるよね。
この賃金の遡及支払いって、過去にさかのぼって払わなければならないの?
高倉:えっと、確かこれは結果的に残業代を過去3ヶ月分支払った案件ですね。
監督官は、最初2年遡及と言っていましたが、3ヶ月に落ち着きました。
でも一方で、この是正勧告書だと2年遡及で出ていますよね。
実はこれは申告監督、つまりタレコミによる調査だったんですよ。
社長:タレコミってやっぱりあるんだ。
高倉:残念ながらあるみたいですね。
申告監督だと、監督官も力を入れてくるので、なかなか対応が難しいですね。
高倉:是正勧告や指導をうけた場合は、その後の対応をしっかりすることが重要ですね。
社長:その場でなんとかならないのかな?
高倉:基本的に後日書面で報告ということになりますね。
費用が発生する項目があるかもしれませんし、長時間労働の是正などは、その後数ヶ月
の状況報告を命じられることもあるので、しばらくは監督署とお付き合いになります。
社長:そんなことまであるんだ。
高倉:受けてしまったものは仕方ないので、今後どのように改善・対策していくかですが、
そこは影響を見極めつつ着実にやるしかないですよ。
万が一、田中社長の会社に調査が入ることになれば、私も全力で対応しますよ。
あまり心配しすぎてもしょうがないので、できることから少しずつ対応しましょう。
今打ち合わせを進めている雇用契約書だって、監督署が調査を行う時の確認項目と
なる場合がありますよ。
社長:えっ、そうだったんだ。じゃあ、しっかりやらないといけないな。
高倉:チェックすべきポイントは抑えてあるので、任せてください。
あと、来年から時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)も一緒に作りましょう。
社長:そうですね。事前に相談します。
高倉:そうそう、忘れていました。
仮に成田の監督署から監督官がいきなり調査でやってきたとしても、商談とかの予定
でその場で対応できないのであれば、後日に設定することはできますからね。
その時は、その旨を監督官に説明してください。
再設定するのであれば、調整次第で私も同席することもできますからね。
社長:そっか、覚えておくよ。
まぁ監督署はウェルカムではないけど、そうなったら一緒にお願いします。
監督署の調査の詳細については、別途紹介しますが、ポイントは以下であると考えます。
監督署の調査が入ることになって困っている
是正勧告を受けて、対応にこまっている
是正勧告を受けないように、現状をチェックしておきたい
このようにお考えの方は、お気軽に社会保険労務士にご相談ください。