ここでは、実話に基づき社労士とある会社の社長とのやりとりを、会話形式で紹介します。
初回は、まだ社労士とのお付き合いのない経営者さまの為に、社労士との打ち合わせのイメージを持っていただきたいと思います。
「社会保険労務士と他の社長はどのようなことを話しているのかなぁ」
「社会保険労務士と顧問契約すると、打ち合わせはどのように進めていくんだろう?」
そう思われた方は、ぜひ続きをご覧ください。
田中社長
成田市で社員5名の会社を経営している。
経営者仲間の林社長から社会保険労務士を紹介され、
先月から顧問契約を結んだばかり。
5年後には拠点を2つ増やしたいと思っている。
高倉社労士
成田市で社会保険労務士をしている。
千葉県と成田市が大好き。
学生時代はサッカーのゴールキーパーをやっていた。
その時の名残りか、「会社を守れる社労士になる」が口ぐせ。
経営者仲間である成田市の小林社長からの紹介で、社会保険労務士の高倉労務管理事務所と顧問契約を結んだ田中社長。今日が初めて社労士がやってくる日。
田中社長は、社労士と一緒に「強い会社」を目指していきたい…とお考えのようです。
社長:あのさぁ、就業規則ってつくらなきゃダメなのかな?
常時10人以上の場合は必要って何かの本に書いてあったけど、うちはまだ5人だから
作らなくて良いよね。
高倉:そうですね。アルバイトの人を含めて10人以上であれば、就業規則を作成して、
所轄の労働基準監督署に届出しなさいって、労働基準法で決まっていますね。
だから、社長のところでは「作成の義務」までは無いですね。
社長:じゃあ、まだ作らなくて良いんだ。
高倉:でも社長、先日見せてもらった雇用契約書に、「○○は就業規則の定めによる」って
記載がありましたよね?あの雇用契約書はどうしたんですか?
社長:ああ、あの雇用契約書は、たしかネットからダウンロードしたものだったかな。
そのまま使っていたよ。気がつかなかったけど、そんなこと書いてあったのか。
高倉:契約書に「会社も従業員も一部ずつ保管する」ことという記載もありましたよね。
今のところ、社員から問い合わせとかは出てきていないですか?
社長:無いといえば無いのかなぁ。まぁ何かあれば、社員から質問や相談があるでしょう。
とは言え、「就業規則による」って書いてあるのに、就業規則が無いのは困るな。
でも、それだけの為に就業規則を作る必要あるのかな?
なにかいい手立てはあります?
高倉:社長、まずは雇用契約書を見直しましょうよ。近いうちに1名採用するんでしたよね。
その方から新しい契約書を使えるようにしたらどうです?
来月の訪問時に具体的な打ち合わせをしましょう。
社長:そうだね。雇用契約書から先にみなおしてもらおうか。
ネットからの拾い物ではダメなんだね。
高倉:最近はネット上に出ている雛形とかでも、十分に考えられているものもありますけど、
雛形は雛形であって、会社の実態とあっていませんからね。
でも、社長が使っている契約書は、すべてネットからの丸写しではないですよね?
ご自身で考えられたんですか?
社長:そう、でも雇用契約書にどこまで書いて良いのか、わからなかったんだ。
高倉:では、そのあたりも打ち合わせのときに説明しますね。
採用する際に、文書で明示しなければならない項目も決まっているですよ。
でも、法律うんぬんよりも、会社と社員が取り交わす最初の約束ごとなんだから、
しっかりと誤解のない雇用契約書を作りましょうよ。
社長:そうだね。言った、言わないとかでもめたくないしな。
社長:でも、就業規則はどうすれば良いかな?作る必要あるのかな?
高倉:新しく社員を採用した時に、どのように会社のルールを説明しているんですか?
会社の決まりごとやこんなことをしたらダメだよって、最初に教えていますよね。
社長:あぁ。それなら簡単なルールを書き出してまとめてあるよ。これだよ。
高倉:なるほど。欠勤する時の連絡方法や社員の心構えが書いてあるんですね。
でも、これ作るの大変でしたよね?
社長:そうなんだよ。初めは「こんなことくらい会社の常識だ」と思っていたけど、
それが通じないんだよ。だからいちいち説明して理解させてやらなくちゃならない。
これが大変なんだよ。
高倉:そうですよね。確か社長のところの社員さんは、みなさん中途採用でしたよね。
中途の方は確かに即戦力になるというメリットもありますけど、一方で「前職の会社
の常識が世間の常識」と思っている人は多いかもしれませんね。
社長:そうかもしれないな。なにかギャップみたいなのはあると思うよ。
高倉:でもそれなら、入り口の段階で「当社の常識はこれだ」って教えたいですよね。
更には、「当社の常識を守ります」って約束させたいんじゃないですか?
社長:本当、そうしたいよ。でもそんなことできるの?
高倉:無茶なルールや約束でなければできますよ。就業規則に入れちゃいましょうよ。
その上で雇用契約書と合わせて、会社と社員の合意事項にすることでできますよ。
社長:具体的に言うと、どうするの?
高倉:まずは就業規則は就業規則として作成し、社員や採用者に内容説明することですね。
それに加えて雇用契約書に「就業規則を遵守し誠実に勤務します」との一文を入れて、
契約書に記名・押印してもらうことですかね。
まぁ、雇用契約書とは別に誓約書を作って、提出させている会社もありますけど、
必要なのは会社のルールに合意した上で働いてもらうことですからね。
社長:そうかぁ。そういう視点で見ると、就業規則は作ったほうが良いんだね。
会社を最初に立ち上げた時から作っておいたほうがよかったのかな?
高倉:いや社長のところでちょうど良いタイミングだと思いますよ。
あまり早く就業規則を作ってしまうと、会社もその就業規則に縛られちゃいますしね。
立ち上げ直後は、あまり先のことわからないから、ルールも頻繁に見直しますよね。
その際に就業規則が足かせになってはならないと思うので、ある程度ルールが固まった
段階で就業規則の制定を考えることで良いと思います。
社長:なら良かった。じゃあ、雇用契約書が出来上がったら、続いて就業規則の方も相談に
乗ってもらえるかな?
まとまった時間は取りづらいので、多少完成まで長引いたとしても、一つ一つルールを
見直しながら作っていきたいんだ。
高倉:もちろんいいですよ。社長のところは法律上の義務も無いことですし、しっかりと
意見を交わして、「使える就業規則」を作りましょう。
就業規則はルール・約束事を記したものである一面と、もう一つの1面があるので、
そのあたりについてはまた就業規則の打ち合わせの中でお伝えしますね。
就業規則についての説明はこちら
いかがでしたでしょうか?
なんとなくイメージはつかめたのではないでしょうか。
田中社長も高倉社労士との打ち合わせの中で、今後取り組むべき事項が見えてきたかと思います。
実際の打ち合わせの場面では、会社さまの抱えているお悩みについて、もっと具体的な話もします。
このあたりについては、今後少しずつご紹介していきますので、お楽しみしてください。